“ながら聴き”の自由さが魅力のオープン型。しかし多くの人が一度は感じる物足りなさが、低音だと思います。空間が開いている以上、鼓膜を揺らすあの重量感はどうしても逃げがち──そう思っていたところに現れたのが、SOUNDPEATSのイヤーカフ型完全ワイヤレス Clip1。初めて耳に挟んだ瞬間、「え、オープン型でここまで出るの?」と驚かされました。
この記事では、独自ワイヤー構造「N-Flex Arch™」、φ12mmデュアルマグネット・ダイナミックドライバー、低域補正アルゴリズム「DynamicEQ™ Pro」、LDAC™やDolby Audio対応など、Clip1の要点を掘り下げつつ、実使用で見えた強み・弱み、設定のコツまで徹底レビューします。価格は9,980円。

結論から言うと、イヤーカフ型の“入門”にも“乗り換え”にも強く推せる完成度です!

- デザインと装着感:5gの軽さ、0.6mmニッケルチタン合金が作る「挟まれているのにラク」
- 音の中核:φ12mmデュアルマグネット+チタンPVD振動板が描く「伸び」と「沈み」
- 機能の要点:DynamicEQ™ Pro・LDAC™・Dolby Audioは“同時併用不可”
- 実聴レビュー:オープン型の“あるある”を覆す低音。高域の微細表現も良好
- 通話・屋外性能:風にも強い。IPX5で日常の汗や雨にも安心
- バッテリー:10分充電で2時間再生。最大40時間のロングライフ
- アプリ「PeatsAudio」:9バンドEQ、アダプティブEQ、タッチ割り当てまで一括管理
- どんな人に向く?用途別おすすめ設定
- 競合と比較ポイント:イヤーフック派でも“乗り換え候補”
- 仕様まとめ(スペック早見)
- 実用TIPS:音量・装着・環境で“最適解”が変わる
- 総評:イヤーカフ型の“次の標準”。コスパで選ぶならまずコレ
デザインと装着感:5gの軽さ、0.6mmニッケルチタン合金が作る「挟まれているのにラク」
まず特筆すべきは装着体験。Clip1は耳孔を塞がないオープンイヤー構造で、耳を“挟む”イヤーカフ型を採用しています。片耳わずか約5g。左右対称設計なので、どちらの耳にも装着できます。
キーとなるのが「N-Flex Arch™」形状記憶合金ワイヤー。0.6mmの超薄型ニッケルチタン合金(いわゆるNiTi)を液体シリコンで被膜コーティングし、2万回のねじれ耐久テストをクリア。圧迫感を抑えながら、落ちにくい絶妙なクランプ力が出ています。耳を押し付けると“スルッ”と収まる装着のしやすさ、外すときに引っ張っても痛くなりにくい抜けの良さは、耳掛け型では得にくい快適さです。
メガネ/マスク/ヘルメットとの干渉が少ないポジショニングも◎。イヤーカフの泣き所である“常時つままれている感じ”を最小限にしつつ、日常の邪魔にならないバランスに仕上がっています。
操作面では、Sロゴ部・ドライバー部・軸部の計3か所にタッチセンサーを搭載。反応エリアが広く、耳元操作のストレスが少ない点も好印象です。さらに、装着した耳側を識別して左右チャンネルを自動で切り替える「AutoSense™」により、L/Rの小さな刻印を探す手間も不要。着けるだけで“正しい定位”になります。

音の中核:φ12mmデュアルマグネット+チタンPVD振動板が描く「伸び」と「沈み」
Clip1の心臓部は、φ12mmの大口径ダイナミックドライバー。真空中でチタンを蒸着させるPVD(Physical Vapor Deposition)技術で振動板表面に硬質コーティングを施し、剛性を高めることで歪みを抑え、中高域の伸びやかさ・クリアネスを確保しています。さらにデュアルマグネット化で駆動力を底上げし、オープン型で失われがちな低域の量感・沈み込みをしっかり引き出しているのがポイント。
このハードウェアに、周波数帯を最適化する独自アルゴリズム「DynamicEQ™ Pro」が重なることで、開放構造の弱点を的確に補正。オンにすると、低域を中心にバランスが整い、輪郭が引き締まります。一般に“ブーミーな持ち上げ”とは一線を画し、音楽全体の土台が下から支えられる感覚に近いです。
機能の要点:DynamicEQ™ Pro・LDAC™・Dolby Audioは“同時併用不可”
Clip1は高効率・高音質コーデック「LDAC™」に対応し、対応スマホと組み合わせれば最大96kHz/24bitの情報量で楽しめます。また、一般的なステレオ音源を広がりのあるサウンドに拡張する「Dolby Audio」にも対応(モードは“音楽”と“ムービー”)。
ただし重要な仕様として、DynamicEQ™ Pro/LDAC™/Dolby Audioは同時にオンにできません。どれか1つを有効にすると、他の2つはオフになります。用途やコンテンツに応じて優先順位を決めるのが賢い使い方です。
どれを選ぶ?実用視点の優先順位
- 日常の使い勝手と低域補正のバランス:DynamicEQ™ Pro
- 対応端末で音の情報量を最大化:LDAC™
- ライブや映画で空間演出を楽しむ:Dolby Audio
相性早見表
有効化する機能 | 低音の力感 | 情報量/ディテール | 音場の広がり | 対応端末の条件 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
DynamicEQ™ Pro | 高い | 中 | 中 | iOS/Androidで広く有効 | オープン型の弱点を自然に補う定番設定 |
LDAC™ | 中 | 高い | 中 | LDAC対応端末が必要 | アプリのEQ(プリセット/カスタム/アダプティブ)と併用可 |
Dolby Audio(音楽/ムービー) | 中 | 中 | 高い | 対応コンテンツで真価 | すべての音源にマッチするわけではない |
補足:マルチポイント接続はPeatsAudioアプリでLDACをオフにすることで利用可能です。
実聴レビュー:オープン型の“あるある”を覆す低音。高域の微細表現も良好
実際にDynamicEQ™ Proをオンで聴くと、まず感じるのは低域の説得力。いわゆる“ドンドン鳴る”という過剰さではなく、開放型で聞こえづらい帯域が適切に補われることで、曲の土台が見通せるようになります。カナル型ほどの密度ではないにせよ、「本来鳴っている低音が欠落しない」ことが音楽のノリやリズム感に直結。ポップスやEDMのキックがちゃんと前に出ます。
中域は価格帯相応で、上位機のイヤーカフ型と比べると情報量がやや控えめ。ただしメリハリの効いたバランスで、軽快な曲調では“明るく抜けの良い”聴き味に。高域はチタンPVDの寄与か、ハスキーなボーカルの倍音や、シンバルの減衰に含まれる微細なノイズまで霧散せず届きます。ディテールが曖昧になりにくいのは好ポイント。
音場はオープン型らしい自然な広がり。アンビエントや自然音系のBGM、Webラジオなど声中心のコンテンツとも好相性です。長時間装着でも耳が蒸れにくく、作業用イヤホンとして“つけっぱなし”で活躍するタイプ。
音漏れについてのリアル
開放型の宿命として、音漏れはゼロにはできません。体感では、音量50%前後だと“ながら聴き”には大きすぎ、数メートル離れた相手にも届くレベル。会話を保ちながら歌詞も拾えるのは20%前後。電車内など静かな環境では10%程度まで絞るのが無難です。SOUNDPEATSの「SoundFocus™」は音漏れの抑制設計ですが、構造起因の漏れを完全に消すものではありません。使う場所・音量のマナーは意識したいところ。
通話・屋外性能:風にも強い。IPX5で日常の汗や雨にも安心
通話は片側1基・計2基のマイクを搭載し、屋外の風切り音を抑える「AeroVoice™」が寄与。開放型は屋外での聞き取りやすさが利点ですが、風の影響は受けやすい領域。そこでAeroVoice™がノイズのしつこさを和らげ、音声の明瞭度を底上げします。
防水はイヤホン本体がIPX5準拠。小雨や汗のシーンでも気兼ねなく使えるクラスです(※水没は不可)。
加えて、装着・脱着で音楽を自動再生/停止する装着検知、片方が落ちたときに音で知らせる落下検出(※ファームウェアアップデートで対応予定)など、日常で効く“あったら便利”がしっかり。低遅延のゲームモードも用意され、映像視聴やモバイルゲーム時のリップシンクズレを軽減できます。
バッテリー:10分充電で2時間再生。最大40時間のロングライフ
低消費電力設計により、イヤホン単体で約8時間、充電ケース併用で最大約40時間の連続再生が可能。急速充電に対応し、10分の充電で約2時間の再生を確保します。通勤・通学から在宅ワークまで、1日の音楽・通話を余裕でカバー。なお、カタログの再生時間はAAC・音量60%・通常モードでの測定値です。実使用では音量・機能設定・電波環境で増減します。
アプリ「PeatsAudio」:9バンドEQ、アダプティブEQ、タッチ割り当てまで一括管理
iOS/Android対応の専用アプリPeatsAudioでは、9バンドの細やかなEQ調整、ユーザーの聴感に合わせて自動補正するアダプティブEQ、プリセット/カスタムEQを完備。DynamicEQ™ Pro・Dolby Audio・LDAC™のオン/オフ切替もここから行えます。
また、タッチ操作のアサイン変更や音声ガイド言語(日本語対応)もカスタマイズ可能。製品を長く使ううえで重要なファームウェアアップデートにも対応します。マルチポイントの有効化(=LDACオフ)もアプリから切替可能です。
どんな人に向く?用途別おすすめ設定
利用シーン/嗜好 | 推奨設定 | ねらい |
---|---|---|
日常の作業BGM・外出の“ながら聴き” | DynamicEQ™ Proオン + 標準EQ | 低域を自然に補正しつつ、装着感・安全性・電池持ちをバランス良く |
iOS端末で音の厚みを確保したい | DynamicEQ™ Proオン + お好みで低域を1〜2dBブースト | 非LDAC環境でもベースの芯を補う |
ハイレゾ相当の情報量を楽しみたい | LDAC™オン + お好みのEQ(プリセット/カスタム/アダプティブ) | 解像感・密度感を最大化 |
ライブ音源や映画で没入したい | Dolby Audio(音楽/ムービー)オン | 立体感・奥行きの増強。ハマるコンテンツでは効果大 |
2台同時接続で仕事と私用を両立 | マルチポイントオン(LDACオフ) | 会議の着信に自動で切替。スマホの再生停止→PC会議へシームレス |
競合と比較ポイント:イヤーフック派でも“乗り換え候補”
オープン型は大きく「耳掛け型」と「イヤーカフ型」に分かれます。耳掛け型は安定性が高い反面、メガネのツルと干渉しやすく、耳上部が痛くなりがち。イヤーカフ型は装着のしやすさと干渉の少なさが魅力ですが、挟み込みの圧が気になることがありました。
Clip1はN-Flex Arch™の最適化で、このトレードオフを上手く緩和。メガネユーザーでも長時間ラク、それでいて落ちにくいという“いいとこ取り”を実現。サウンド面でもDynamicEQ™ Proの効きが自然で、オープン型の弱点である低域の補完がハード×ソフトの両輪で効いています。
弱点は前述の通り音漏れ。静かなオフィスや図書館では音量を絞る工夫が必要です。また、DynamicEQ™ Pro/LDAC™/Dolby Audioが同時併用できない点は、使い方の設計が求められる仕様。ただ、役割分担が明確なので“シーンに合わせて切替える”という運用を前提にすると、むしろ迷いにくいとも言えます。
仕様まとめ(スペック早見)
項目 | 内容 |
---|---|
形式 | イヤーカフ型・オープンイヤー構造(耳孔を塞がない) |
ドライバー | φ12mm デュアルマグネット・ダイナミック、チタンPVDコーティング振動板 |
重量 | 約5g(片耳) |
ワイヤー構造 | N-Flex Arch™ 形状記憶合金ワイヤー(0.6mm NiTi、液体シリコン被膜、2万回ねじれ耐久) |
主要アルゴリズム | DynamicEQ™ Pro(周波数最適化)、AeroVoice™(風切り音低減)、SoundFocus™(音漏れ抑制設計)、AutoSense™(左右自動識別) |
コーデック | SBC / AAC / LDAC™(最大96kHz / 24bit、ハイレゾオーディオワイヤレス認証取得) |
Dolby Audio | 対応(音楽/ムービー) |
バッテリー | イヤホン単体約8時間、ケース併用最大約40時間(AAC・音量60%・通常モード) |
充電 | 急速充電対応(10分充電 ≒ 約2時間再生) |
接続 | Bluetooth(マルチポイント対応※LDACオフ時) |
マイク | 片側1基・計2基(通話用) |
操作 | タッチセンサー×3(ロゴ部・ドライバー部・軸部) |
防水 | IPX5(イヤホン本体) |
検知機能 | 装着検知(着脱で再生/停止)、落下検出(※FWアップデートで対応予定) |
アプリ | PeatsAudio(iOS/Android):9バンドEQ、アダプティブEQ、プリセット/カスタムEQ、タッチ割り当て、音声ガイド言語変更、機能トグル、FWアップデート |
設計 | 左右対称設計、どちらの耳にも装着可能 |
保証 | 購入から1年間のメーカー保証 |
価格 | 9,980円 |
実用TIPS:音量・装着・環境で“最適解”が変わる
- 音量管理:屋外は20%前後でも十分聴き取れます。公共交通機関では10%程度まで下げると安心。
- 装着のコツ:耳に軽く押し当てて“スライドさせる”と、痛みなく素早く収まります。外すときは軸部を持って真っ直ぐ引き抜くと◎。
- メガネ併用:ツルの位置と干渉しにくい設計ですが、長時間はツルを少し持ち上げてから装着すると圧迫感がさらに軽減。
- 機能切替:作業BGM→DynamicEQ™ Pro、音楽鑑賞→LDAC™、映画→Dolby Audio、と使い分けると満足度が高いです。
総評:イヤーカフ型の“次の標準”。コスパで選ぶならまずコレ
Clip1は、装着の快適さ・低域の説得力・機能の充実度という三拍子を、9,980円という価格で完成させた稀有なモデルです。メガネユーザーでも痛くなりにくい装着感、オープン型の弱点を的確に補うDynamicEQ™ Pro、必要十分なバッテリーライフ、そしてLDAC™やDolby Audioまで網羅。音漏れという宿命と、3機能の同時併用不可という設計上の制約さえ理解して運用できるなら、ながら聴きの本命に数えて間違いありません。
オープン型が初めての人にも、耳掛け型から快適さを求めて乗り換えたい人にも。SOUNDPEATSが掲げる“HEAR THE DIFFERENCE”を、日々の生活に無理なく持ち込める一台です。

会社情報(参考)
- 会社名:音科資訊科技株式会社(SOUNDPEATS)
- 本社所在地:中国 深圳市龍華区匯海広場B区1309室
- 設立:2010年
- 代表取締役社長:楊偉
- 事業内容:オーディオ・EC販売事業 ほか
- 公式サイト:https://jp.soundpeats.com/
本記事の内容は、公開されている製品仕様・機能説明に基づいています。実際の体感は使用環境や端末、コンテンツにより異なる場合があります。
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